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番外札所

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法華懺法

20年あまり前のある深夜。暗闇の中を煌々と明るい列車が走っていた。昔の「大垣夜行」、当時の名前は「ムーンライトながら」。現在も臨時列車としてときどき走っているようだが、その夜行列車で、私とAは大津へ向かっていた。藤原義久作曲、「天台寺門宗総本山園城寺声明による男声合唱~ 法華懺法」の題材となった園城寺(通称三井寺)の声明を聞きに行くための、0泊2日の弾丸ツアーだった。

旅の詳細は覚えていないが、三井寺には緑が生い茂っていて、私はその境内に設置されたテントの中に座り、声明の不思議な響きをそわそわしながら聞いたのを覚えている。「散華」の部分では、立ち上がった僧侶が蓮の花びらを模した紙をはらりはらりと放つのだが、その光景は私の記憶には何とも幻想的に残っている。花びらの紙はお守りとして持ち帰ることができ、1枚頂戴して帰った。それは今もアルバムの中に大事にしまってある。

その8年後、私はお遍路の旅に出て、徳島から高知、松山までを巡ることになるのだが、もちろん当時は自分がお遍路に出ることなど予想すらしていなかった。学生指揮者として「法華懺法」の演奏に関わった経験が私を四国へ導いたのか、はたまたお遍路に行くための予習として何者かが私に「法華懺法」を勉強させたのか。私の中では密接につながる二つの大きな経験である。

このたび、OB合唱団「ジョーバニ」の演奏会で、「法華懺法」を改めて演奏することとなった。この機会に、お遍路などを通して得た知識と経験も踏まえ、改めて「法華懺法」を味わってみたいと思う。あくまでも曖昧な記憶と勝手な解釈による、個人的なエッセイであることをご了解いただきたい。

by npapapapa | 2019-05-10 10:10 | 合唱